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問題とされたレッド・ツェッペリンの『天国への階段』は、彼らの作品の中でも
名曲中の名曲で、1990年末までに総計1000万枚の売り上げを達成した
大ロングセラーである。
その作曲は、リード・ギタリストのジミー・ペイジによって行われ、
詞は、ヴォーカルのロバート・プラントがほとんど即席で書き上げたものだった。
『天国への階段』の詞には、
人生の意味と天国への道のりを探し求める女性について歌われているが、
当時プラントが読んでいた本が影響している。
例えば、スペンサーの『妖精の女王』やロバート・グレイヴスの『白い女神』、
そしてケルト人のヒロインたち、『湖の貴婦人』『フィールズ・グリーンのダイアナ』
『悪夢のリアノン』などすべてが合わさった主人公となっている。
また、プラントはイギリスの古美術研究家ルイス・スペンスの本も愛読していて、
『天国への階段』の参考資料として、『マジック・アート・イン・セルティック・ブリテン』を
あげている。
作曲を行ったペイジは、イギリスの魔術師アレイスター・クロウリー(1875- 1947)の
信奉者であったため、考えようによっては、悪魔的な意識が加わった可能性は否定できないが、
プラントによる詞は決して異常なものではなかった。
さらに、決定的なことであるが、レッド・ツェッペリンはレコーディングの際に
バックマスキング技術を使ってメッセージを意図的に加えるようなことは行っていなかったと
考えられるのだ。
多くの場合、レッド・ツェッペリンのメンバーたちは謂れなき非難を無視していたが、
レコード・レーベルのスワンソング・レコードは、
「我々のターンテーブルは一方向(前)にのみ再生する」と声明を発し、
オーディオ・エンジニアのエディ・クレイマーは「まったく馬鹿げている。
どうして彼らがそんなに馬鹿げたことにスタジオでの貴重な時間を費やしたいと思うだろうか?」
とあきれ、「バックマスキングなんてものは存在しないし、ツェッペリンが秘密の
メッセージを録音したことなど一度もない」と断言した。
そして、1983年、ロバート・プラントは雑誌『ミュージシャン』でのインタビューにおいて、
次のように不快感を表明した。「私にはとても残念なことです。というのも、
『天国への階段』は最善の意図で書かれていて、テープを逆再生して最後にメッセージを入れる
ということまでは、音楽を作る自分の考えにありませんでした。」
だとしたら、なぜ『天国への階段』を逆再生すると、不気味なメッセージが聞こえてくるのだろうか?
大音量を響かせたハード・ロックのレッド・ツェッペリンは、高校生や大学生のような若い世代には
熱狂的に受け入れられたが、ビートルズやローリング・ストーンズで育った世代にはあまり受けなかった。
長いアメリカ・ツアーの間、彼らは毎晩のようにグルーピーの女の子たちと乱交パーティーを
繰り広げていたことからも、世間では悪評が広がっていた。
だが、彼らのそんな活動と、逆再生時に聞こえてくる悪魔的なメッセージとの関連性は薄い
ようにも思われた・・・。
⇒ 『天国への階段』の実態 (次項)
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